系統分析 の実験 (1)
陽イオンの定性分析の中で、伝統的に行われてきた 系統分析を行ないます。 元素分析の手法は、原子吸光や ICP 、蛍光X線などの機器分析が主流となっていて、系統分析の実用価値は下がっています。
しかし、物質の沈殿特性や pHの変化による振る舞いを体得し、安価で簡便に測定し、また金属や無機化成品製造の指針を得て、化学の基本的反応、分離の仕組み、基本的な実験操作を習得するには、この湿式分析が一番と思われます。
系統分析にはいくつかのパターンがあり、ここでは最も一般的な、硫化物を中心に分属する方法、=「硫化物法」を、なるべく「セミ・ミクロ」の規模で行なうものとします。(容量1滴=約0.05ml。 もちろん水はすべて「脱イオン水」を使う。 スポイトはポリ1mlのもので、0.1ml刻みの目盛有りで代用可。)
なお、最近では、この硫化水素の悪臭と毒性を嫌って、「チオアセトアミド(CH3・C=S・NH2)」で代替するようになってきています。
ただし チオアセトアミドが硫化水素を出す速度、すなわち硫化物形成の速度は遅く(湯浴で加温する上、完結に10分もかかる)、また遊離の硫黄が出やすく
沈殿の見分け方には熟練が必要です。
・・・・ 使用する硫化水素は臭く、かつ有毒なので、全般にわたって 換気注意! 中毒のほか、”異臭騒動”が起こらないように、特別の注意を要します(?)。
特に、硫化水素を間違ってアセトンに低温で吹き込むと、世界最強の悪臭物質”チオアセトン”ができてしまうので要注意。
参考HP 金属イオンの系統分析 系統分析フロー
1. 分析試薬・用具の整備:
(1) 硫化物沈殿の pHの影響:
第2属の冒頭で、塩酸 HCl を加えて pHを 約0.6に調整し、硫化水素を通じると、第2属の Cd2+、Pb2+、Cu2+、Hg2+などは CdS、PbS、CuS、HgSなどの沈殿を作るが、第4属の Zn2+、Ni2+などは溶液に残る。 0.01Mの金属イオンについて、溶解度が 10−5 以下ならば 99.9%以上(=定量的に)沈殿するので、pH=0.5において硫化水素を通じると、第2属のうち最も溶解度の高い SnS、CdSは十分沈殿し、一方 第4属のうち最も低い
ZnSは 溶解度が10−2 以上であり Zn2+は溶液に十分とどまることになる。
● pH=0.5とは、0.3Mの塩酸の濃度で、校正済みのpHメータで測って
ちょうどこの値だった。
● また、指示薬のメチルバイオレット(変色域: 0.8−2.6)が手持ちで無かったので、チモールブルー(変色域: 1.2−2.8)を用いて、30mlの純水に 1M (=1N)塩酸を滴下し、色がピンク赤色で黄色が完全に消えた時点(pH=1.2)から数えて 100滴前後で pH=0.6〜0.7になることが分かった。(1mlプラ・スポイトで、60滴でpH=0.8、130滴でpH=0.6、210滴でpH=0.5、この時43ml) そこで、試液の量に応じて
1M塩酸を適宜加えることにした。 (チモールブルーが変色しきったところから、試液量が1mlならば4〜5滴、
3mlならば12〜15滴 など)
● 硫化水素ばっ気装置:
1) 硫化鉄を作る: 鉄粉 Fe 45gと 硫黄 S(粉末) 26gを、乳鉢でよくすりつぶして混ぜる。
これを アルミパンやプリン型などの金属製の容器に入れ、ドラフトあるいは戸外で、アルミ箔でふたをし
下から加熱して点火し、火を遠ざけて自然燃焼させる(弱く赤熱する)。 反応が終わり
冷えてから、アイスピック、ドライバー等でつついて硫化鉄 FeSを取り出し、乳鉢に入れてザクザクに粗く砕く。 収量: 約60g ・・・・・ 中二の理科実験だ(?)
2) 二股試験管(硫化水素を多く発生させないため)の狭い方(くびれている方)に硫化鉄を
5〜10g(H2S飽和溶液等の作成時は 約20g)入れ、反対側のストレートの方に
1:1(6M)塩酸を混じらないように入れて、(振るため)長めのシリコン管でつなぎ、ばっ気用試験管(やや大きめの)を通して、最後は
下に小ロートを逆さに入れてアルミナ繊維などを敷き、その上に消石灰と水酸化ナトリウムを積層した集気びんに導いて、余った硫化水素をトラップする。(通気抵抗がないように注意) この装置は、戸外、ドラフト、あるいは排気ダクトのついた小室内等で
注意深く使用する。
通気時は、二股試験管を傾けて 塩酸を少しずつ硫化鉄側に入れ、試料を入れた太試験管を持ち、静かに振って曝気するようにする。 (試料を交換、装置をばらす時など、どうしても多少の硫化水素が漏れる。) 換気注意
(2) 各種試験薬の作成:
1) 硫化水素ばっ気液: ・・・ 水に硫化水素を通して飽和した時の濃度は、pHによらず約0.1M。換気注意
・ 0.1M HCl・H2S 飽和液 ・・・・ 0.1M HCl 20mlに
H2Sを過剰に通す、 30mlPPビンに密栓保存 ・・・ 第2属の沈殿洗浄用
・ 0.1M NH4NO3・H2S 飽和液 ・・・・ 0.1M NH4NO3 0.4g/50ml
を作り、その20mlに H2Sを過剰に通す、NH4NO3は沈殿のコロイド化を防ぐ、 30mlPPビンに密栓保存 ・・・ 第2属Aの沈殿洗浄用
・ 0.5M (NH4)2S ・・・・ M=80.0、 1M NH3 を10ml取り、H2Sばっ気
(最初 泡が小さくなり、飽和すると泡がそのままの大きさ)、 10mlポリ滴下ビンに保存 ・・・ NiS、CoS沈殿用
2) 指示薬:
・ 0.2% チモールブルー水溶液 (pH:1.2(ピンク赤)−2.8(黄色)、8.0−9.6(青)、
メチルバイオレットの代用)、 10mlポリ・滴下ビンに保存
・ 0.1% フェノールレッド水溶液(ろ過する) (6.8(黄色)−8.4(赤))、 10mlポリ滴下ビンに保存
・ 1% フェノールフタレイン 80%エタノール溶液 (8.3(無色)−10.0(赤))、 10mlポリ滴下ビンに保存
3) 酸・アルカリ等:
・ 濃NH3 28% = 15M
・ 6M NH3 濃NH3 41ml+水で100ml、 100mlポリビンに保存
・ 6M NaOH、 100mlポリビン
・ 6M HCl 1:1、 100mlポリビン
・ 1M HCl 、 100mlポリビン
・ 0.1M HCl、 100mlポリビン
・ 6M HNO3、 100mlポリビン
・ 3M H2SO4、 100mlポリビン
・ 6M 酢酸(CH3COOH) 氷酢酸(17M)10ml + 水で28ml、 30mlPPビンに保存
・ 3% H2O2 30%H2O2 2ml + 水で20ml、 100mlポリビン保存 ・・・ 第3属 クロム酸へ酸化
4) 各種試験液:
・ 0.1M K4Fe(CN)6(フェロシアン化カリウム) 0.4g/10ml ・・・・ 弱酸性で Cu2+、Fe3+確認用
・ 0.1M K2CrO4 0.2g/10ml、 10mlポリ滴下ビンに保存 ・・・ Pb2+、Ba2+確認用
・ 1M KCN 0.65g/10ml、 10mlポリ滴下ビンに保存 ・・・ Cd確認時の
CuSの沈殿防止用
・ 1M NH3I NH3(1M)10mlに H I を通気、 H I は二股試験管の片方に
I2 4g、水1.5ml入れ、もう一方に 赤燐(P)2gを入れて 発生、(H2Sと違って、ガスの溶解速度が速いので、管の途中にピンチコック付きのT字管を設け、逆流に素早く対応する)、酸過剰になっているので1M
NH3で中和、 30mlポリビンに保存 ・・・ As(X)をAs(V)に還元、Hgの確認用
(・ Na2Sx (多硫化ナトリウム)水溶液 ・・・ 第2属Bの溶解用(チオ錯イオンを作って溶解) もし
(NH4)2Sx を用いれば、HgS は溶けず Hg2+は第2属Aに入る。)
・ 5% NaClO ブリーチをそのまま使用、酸化剤
・ 5% SnCl2・2H2O 水溶液、6M塩酸を数滴加える、 10mlポリ滴下ビンに保存 ・・・ Bi3+、Hg2+確認用
・ 0.2M(約5%) HgCl2 水溶液、6M塩酸を数滴加える、 10mlポリ滴下ビンに保存 ・・・ Sn2+確認用
・ マグネシア混液 Mg(NO3)2 + NH4NO3 + NH3 各0.5M、 10mlポリ滴下ビンに保存 ・・・ AsO4−確認用
・ 0.5M(約9%) モリブデン酸アンモニウム 水溶液、 10mlポリ滴下ビンに保存 ・・・ AsO4−確認用
・ 5% 塩酸ヒドロキシルアミン 0.5g/10ml水、 10mlポリ滴下ビンに保存 ・・・ 鉄、マンガン還元用
・ 飽和臭素水(Br) 臭化カリ(KBr)と 過硫酸アンモン((NH4)2S2O8)溶液を熱して臭素を蒸留、耐薬品性のねじ口試験管に保存 ・・・ 第3属を+3価に酸化
・ 0.5% アルミノン 水溶液、 中性〜弱アルカリ性で 赤色の沈殿、 アルカリ土類金属が共存する場合は
1M (NH4)2CO3を2滴加え沈殿させ妨害をなくす、 10mlポリ滴下ビンに保存 ・・・ Al3+の検出用 (Be2+、Ga3+も赤色沈殿、 Fe、Cr、Ni、Zn は別の色)
・ 0.1M KSCN(チオシアン化カリウム) 1g/100ml、 10mlポリ滴下ビンに保存 ・・・ Fe3+確認用
・ 0.05M Pb(NO3)2、 10mlポリ滴下ビンに保存 ・・・ CrO42-の確認用
・ 1% ジメチルグリオキシム エタノール溶液、 10mlポリ滴下ビンに保存 ・・・ アンモニアアルカリ性で
Ni2+確認用 (Pdにも使える)
・ 0.5% NN‐ジエチルアニリン エタノール溶液、 10mlポリ滴下ビンに保存 ・・・ K3Fe(CN)6と共に
Zn2+確認用
・ 0.1M K3Fe(CN)6(フェリシアン化カリウム) 0.33g/10ml、 10mlポリ滴下ビンに保存
・ 飽和NH4Cl 、10mlポリ滴下ビンに保存 ・・・ 第4属 洗浄用
・ 1M 炭酸アンモニウム((NH4)2CO3) 市販品炭酸アンモニウム3g/30ml(水溶液は炭酸ガスをゆっくり発して(NH4)2CO3に近づく)、30mlPPビンに保存 ・・・ 第5属の沈殿用
・ 1M 酢酸アンモニウム(NH4Ac) 、 10mlポリ滴下ビンに保存 ・・・ Ba2+分離用
・ 0.25M 硫酸ヒドラジン((NH2)2・H2SO4) 1g/30ml、 10mlポリ滴下ビンに保存 ・・・ Sr2+沈殿用
・ 0.1% カルセイン 50mgを1mlの1M KOHに溶かし 水を加えて50mlにする、10mlポリ滴下ビンに保存 ・・・ 酸性・中性では黄色溶液で蛍光を発するが、アルカリ性では薄赤色で、蛍光は消失する。しかし、Al、Ca、Ba、Cu、Mg、Znがあると再び蛍光を発する。 Ca2+(Sr2+、Ba2+)確認は強アルカリ性(pH13)で 495nm。強アルカリ性の場合は、他は光らない。
5) 第6属、陰イオン関係の試薬:
・ キレート滴定用試薬一式: 0.01M EDTA 2Na、 BT(エリオクロムブラックT) 0.2%メタノール溶液、 NN希釈粉末 等
・ 5% 亜硝酸コバルチナトリウム(Na3Co(NO2)6、M=403.94)、 10mlポリ滴下ビンに保存 ・・・ K+、NH4+ (Mg2+、Ca2+) 沈殿用、 ただし K塩は Naも共沈するので 定量に用いることはできない、 K+濃度閾値はかなり高く 1000ppmで実験したところ はっきり沈殿した。
(・ NH3の検出には、ネスラー試薬が有名である)
・ 0.5%ヨウ素酸カリウム+デンプン溶液 ・・・ SO32− の検出
・ NO2試薬(既製品、 ナフチルエチレンジアミン法) ・・・ アゾ色素の原理を応用した
NO2− の微量定量用、高感度、0.02〜0.2ppmで 吸光度が直線となる。
・ ブルシン・7水和物 1.284g/100ml水溶液 ・・・ 濃H2SO4と共に用いて
NO3− の比色定量用、0.1〜2.5ppmで直線、 過塩素酸(HClO4)を加えると NO2−も定量可能となる。
(3) 陽イオン分析用 混合試料液の作成: 全部混ぜると大変なので、次の4つに分けることにした。 それぞれの陽イオンは
0.01〜0.05Mの範囲内とした。
● T液: Ag2+、Cu2+、Pb2+、Bi3+ ・・・ 第1属、第2属A (硝酸塩)
・ AgNO3 0.6g(=0.004mol)/10ml =0.4M、 ・ Pb 1g(0.8g=0.004mol) + 濃HNO3 1.2ml
に溶かす(反応しにくいので加熱・煮沸。 反応後、+若干の水)、 ・ Bi 1.5g(1.1g=0.004mol) + 濃HNO3 1.2ml
に溶かす、 ・ CuO(M=79.5) 0.4g(0.004mol) + 濃HNO3 0.6ml
+ 水で 約2mlにしたものに溶かす(少し加熱)、
以上の4種の上澄みを混合し、全体を水で 100mlとし、さらに 1.5倍に薄める。次硝酸ビスマス(不溶性)が多量に沈殿するので、30mlだけ ろ過する。 最後に 6M HNO3 2滴を加える。 ・・・・ 各約0.026M(Bi
は僅少)、 計30ml
● U液: Cd2+、Fe3+、Zn2+、Ni2+ ・・・ 第2属A、第3属、第4属 (塩化物、硫酸塩混合、 特に Cdと Znの分離がポイント)
・ CdCl2・2・1/2 H2O(M=228.3) 0.2g(0.001mol)/30ml水溶液とする、これに、 ・ ZnSO4・7H2O(M=287.5) 0.3g、 ・ FeNH4(SO4)2・12H2O(M=482.2) 0.5g、 ・ NiCl2・6H2O(M=237.7) 0.2g を加えて
よく撹拌する。 最後に 6M HCl 一滴を加えておく。 ・・・・ 各約0.03M、 計30ml
● V液: Fe3+、Mn2+、Al3+、Cr3+ ・・・ 第3属 (H2Sを使用しない)
・ FeNH4(SO4)2・12H2O(M=482.2) 0.5g、 ・ MnCl2・4H2O(M=198) 0.2g、 ・ AlK(SO4)2・12H2O(M=474.4) 0.5g、 ・ Cr2(SO4)3・xH2O(x≒12、M=716.5) 0.7g を、水に加えて
30mlとし、ろ過する。 最後に 6M HCl 5滴を加える。 ・・・・ 各約0.03M、 計30ml
● W液: Ni2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+ ・・・ 第4属、第5属 (H2Sを使用しない)
・ NiCl2・6H2O(M=237.7) 0.2g、 ・ CaCl2(M=111) 0.1g、 ・ Sr(NO3)2(M=211.6) 0.2g、 ・ BaCl2・2H2O(M=244.3) 0.25g を、水に加えて
30mlとする。 最後に 6M HCl 2滴を加える。 ・・・・ 各約0.03M、 計30ml
(ばっ気と ろ過の方法)
・ 分析本番で、小試験管に通す時は、テグスで吊って 取り出しやすいようにしておく。(テフロンテープは引っ掛かり)
・ 沈殿物を溶かして採取する場合は ろ過管(乾燥管を転用)を用い、脱脂綿を詰め ブロアを押し当てて用いる。(沈殿が細かく脱脂綿を通り抜けるときには
小プラ漏斗とろ紙を使用する。時間がかかる。)
・ 蒸発濃縮・乾固などの時は 熱ショックに強い 石英るつぼ(10cc、30cc、
アリエク)が使いやすい。
2. 陽イオンの系統分析:
(1) 試料液 T の分析: ・・・ 第1属、第2属A 系統分析フロー
試料液 T を、2ml分取し、それに合わせて使用する試験管は 小試験管(φ14×95mm)を用いた。
第1属は、HClで沈殿するもので、6M HCl 2滴加えると、AgCl、PbCl2、Hg2Cl2が沈殿する。 軽く加熱して沈殿熟成し、よく冷却させ、PbCl2をなるべく落とす。さらに6M
HCl 2滴加え、これ以上沈殿が生成しないことを確認する。 ろ過管によるろ過を行なう。 → ろ液は 第2属へ。ただし、ろ液にはまだ溶けているPbCl2を含む。
熱湯で、PbCl2を別の試験管に洗い落とす。 → 酢酸アンモニウム、K2CrO4
を加えると PbCrO4(クロム酸鉛)の 黄色沈殿。
さらに、そのまま同じろ過管を 別の試験管に差し替え、6M NH3を10滴滴下すると、AgClが錯イオンとなって落ちる。
フェノールフタレイン一滴と 1N HClを加えて無色とし、再びAgClの白色沈殿が見られる。
KI(ヨウ化カリウム)を入れると ヨウ化銀の黄白色の沈殿。 NaOHとホルマリンで
灰黒色の金属銀になる。
第2属は、pH0.5〜0.7の強酸性で H2S によって硫化物を沈殿するもので、 PbS、CuS、Bi2S3 が沈殿する。硫化水素の量は少なくてよく(FeS 5gくらいで充分)、少し通すだけで速やかに、完全に沈殿する。
ここでは、第3属以降のイオンを含まないことが分かっているので、第1属からのろ液に、そのまま
H2Sを通じて沈殿させた。換気注意
これを、ろ過することなしに 6M HNO3を2〜3ml加えて煮沸し、沈殿を分解する。
さらに10mlの石英るつぼ(蒸発皿よりも熱ショックに強い)に入れて 6M HNO3を 8滴加え、蒸発乾固してさらに加熱して SO3の白煙を出させる。
これに 3M H2SO4 2滴と 水2ml加えると、Cu、Biは硫酸塩として溶けて、PbSO4は白色粉末として残る。
これをろ過し、ろ液に 濃NH3を加えると、Cuは錯イオンとして溶け、Biは
Bi(OH)3として白い沈殿ができるが、量が少なかったのでBiの確認は取りやめとした。(試料液作成のところで大部分が失われた) 上澄みをフェノールフタレイン+酢酸で中和して K4Fe(CN)6一滴入れると、フェロシアン化銅の
赤褐色沈殿ができる。
ろ過管に残ったPbSO4は、1M 酢酸アンモニウムを滴下すると溶けて落ちる。
K2CrO4で PbCrO4の 黄色沈殿。
(2) 試料液 U の分析: ・・・ 第2属A、第3属、第4属 系統分析フロー
試料液 U を、2ml分取。 ここでは、第2属と第4属の pH調整によるH2S沈殿分離が 重要なポイントとなる。
第2属は、H2S曝気の際、CdSのみ沈殿し ZnSは溶液にとどまるように、pHを 0.5〜0.8程度に調整する。
チモールブルー(TB)一滴を加え、1M HCl を滴下・撹拌し pH=1.5〜1.2(黄色味が完全に消え、ピンク赤色)になったら、そこから 1M HClを 10滴加える。 (ヒ素As(X)が含まれているときは、NH4I を加えて加熱し、As(V)に還元しておく。)
ばっ気装置にセットしH2Sを通す。(CdSの黄〜黄橙色沈殿)換気注意 沈殿をろ過管でろ過し、0.1M HCl・H2S飽和液 3mlで沈殿を洗浄する。 → ろ液は、第3属へ。
(Na2Sx、加温、沈殿分離は、第2属Bが含まれていないので省略)
細い棒で綿を押し出し、付着している沈殿を 水2mlで石英るつぼに洗い落とす。 6M
HNO3 2ml加え、煮沸後、6M HNO3 8滴加えて 蒸発乾固、さらに加熱してSO3の白煙を出す。
3M H2SO4 2滴+水2ml加えて溶かす。 (ここでは、不溶性のPbSO4は残らない)
溶液に 濃NH3を2滴加え(ここでは、Bi(OH)3は沈殿しない)、1M
KCNを2滴加え(Cuがある場合、H2SでCuSは沈殿しない)、さらに H2Sを通す。換気注意 CdSの黄色沈殿。(Cdの確認)
第3属は、pH=8〜9.5で NH3で水酸化物の沈殿を形成するもので、第4属はアンミン錯体としてろ液の方へ行く。
先のろ液を30ml石英るつぼで煮沸して H2Sを追い出し、硝酸鉛ろ紙に一滴つけて H2Sが存在しないことを確認する。 フェノールレッド一滴+飽和NH4Cl2滴を加えて、濃NH3で
赤→黄(pH=8.4)になったら さらに濃NH3 3滴加えて(pH=8.0〜9.5、 Ni、Co、Znはアンミン錯体溶、第5属は水酸化物を沈殿しない)加温し、飽和臭素水(Br、 Fe(U)→Fe(V)、 Mn(U)→Mn(V、W)に酸化)10滴加えて 数分間加温する。
これをろ過管でろ過し、沈殿物(ここではFe(OH)3)を、飽和NH4Cl 2滴+6M NH3 2滴+水4ml で洗浄する。 脱脂綿をいくらか通るので もう一度通常ろ過する。 → ろ液は、第4属へ。
細い棒で綿を押し出し、付着している沈殿を 水2mlで石英るつぼに洗い落とす。 6M NaOH 10滴、3%H2O2 20滴を加え 煮沸・撹拌し、通常ろ過でろ過する。(ろ液にはAl(OH)4−、CrO42−は無い) 沈殿を 6M HNO3 10滴、水2mlで洗い落とし、5%塩酸ヒドロキシルアミン2滴を加えて煮沸する。(Fe(OH)3→Fe(V)、Mn(OH)n→Mn(U)) 溶液を二つに分け、一方に
0.1M KSCN一滴 → 赤色沈殿(Fe(V)の確認@)、 もう一方に、0.025M
K4Fe(CN)6 一滴 → 青色沈殿(Fe(V)の確認A)
第4属は、H2Sによって pH=2.6前後で 硫化物を沈殿する Znと、アルカリ性にして(NH4)2Sで沈殿する
Ni、Coがある。
先のろ液を 30ml石英るつぼに入れ、加熱しほぼ蒸発乾固(NH3除去)し、放冷後、水4ml、6M酢酸 4滴に溶かし(0.3M酢酸酸性溶液の pH=2.6で ZnS(帯黄白色)はすべて沈殿し、NiS、CoS(黒色)は沈殿しない)、H2S曝気し、湯浴中で2〜3分加熱し、通常ろ過する。換気注意 これを 水2ml+飽和NH4Clで洗浄し(この洗液不要)、白色沈殿物の ZnS
が残るので、1M HCl 10滴と ろ過管ごと加温して 水2ml加えて落とす。 K3Fe(CN)6(フェリシアン化カリウム、酸化剤)
一滴と NN‐ジエチルアニリン一滴を加える → 橙赤色の沈殿 (Znの確認)
先のろ液に、濃NH3 2滴加え、3−4分加温し、0.5M (NH4)2S 2滴加え、ろ過管でろ過する。ろ液にさらに0.5M (NH4)2S 2滴加え、もう一度戻して沈殿分離する。(沈殿は黒色の NiS、CoS) 水2ml+飽和NH4Cl
で洗浄する。 (ろ液は、第5属が無いので ここで終了)
脱脂綿ごと沈殿を30ml石英るつぼに入れ、6M HCl 4滴、5%NaClO
10滴を入れて(綿を絞り) 蒸発・ほぼ乾固し、水2ml加える。 溶液に、6M
NH3 4滴、ジメチルグリオキシム2滴 → ピンク赤色沈殿 (Niの確認)